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幸せな思いはとりとめもなく.....@星組『さくら』東宝初日

東京宝塚劇場。星組東京公演初日。

お天気に恵まれた明るい午後。開演前の劇場周辺には、たくさんの人、人、人......スポニチ・アネックスの見出しではないですが(笑) ファンクラブのチケ出しの長い列。待ち合わせをする人々。開演前に食事をしたり、キャトルレーヴを覘く人も少なくないのでしょう。日比谷シャンテと劇場の間の道路を横切る人も数知れず。劇場係員のお兄さんのメガホンの声がひっきりなしに響いています。

劇場ロビーも、大勢の人でごった返していました。柱の脇には、この公演の大判のポスターを貼ったスタンドが置かれ、その両脇に小林公一歌劇団理事長父子が立ち、さらにその隣に劇場支配人の小川甲子さんが立ってお客様を出迎えていました。この華やいで賑やかな空気は、初日ならではのものですね。今日は新しいトップさんの東宝お披露目の日だから、なおさらですね。

初日を一緒に観劇することになったオネエサマのご贔屓はとどさま(轟悠)なので、オネエサマはトウコさん(安蘭けい)がまだ下級生の頃から良く知っているらしく。「今日は私、安蘭さんのお披露目と思うと、ほんとうにうれしいのよ」と。オネエサマのとどさまご贔屓仲間のオバサマに出会うと「ほんとうによかったよね~」と口々に言い合っています。そういう古くからのファンも少なくないのかな......意外とご年配の姿も多く見かけられました。

人でぎっしり埋まったエスカレーターを最上階まで上り、「すみれの花咲く頃」のチャイムに送られて2階中段のサブセンター席に収まりました。いつも見慣れた東京宝塚劇場の赤い緞帳を見下ろすと、また新たな感激がこみ上げてきました。ムラで観劇したときとはまた違う感激。

そう。いつもここで宝塚歌劇を観劇している私たちにとっては、ここで開演を待つ気持ちはやっぱり格別なのですね。いわば「わたしたちの場所」にトップさんをお迎えする気持ちかな.......


やがて客電が落ち、客席のざわつきも次第におさまり。焦らすかのような静かな、長いようで短い時間の後。

「皆様ようこそ東京宝塚劇場におこしくださいました。星組の安蘭けいです」

アナウンスの声に、大きな拍手が沸き起こりました......あぁ。思わず目を閉じて、大きく息を吸い込みました。このアナウンスを聞く日を待っていた.....いまこの客席を埋め尽くす、そのほとんどの観客たちがそうであるのと同じように.......目頭がジンワリ熱くなりました。

前奏の音に再び目を開け。拍子木の音が響いた次の瞬間。新しいトップさんのお披露目公演の幕開けにふさわしい、華やかで煌びやかな舞台が現れました。客席からは大きな拍手と、歓声ともタメイキともつかない声が上がりました。

5月も半ばを過ぎたのに「さくら」だなんていかがなものかしら.....なんて思っていたけれど。色とりどりの花を撒き散らしたような舞台を見つめていると、時が一月半ほど後戻りして、今が春の盛りのような気がします。

その春の盛りの舞台の中央に、扇をかざしたトウコさん(安蘭けい)がセリ上がりました。再び、そしてひときわ大きく沸き起こる拍手。この場所でこんなに大きな拍手を聞いたのは初めてではないかしら.......もしかしたら初めてじゃないのかもしれないけど(苦笑)。でも、今までこの劇場で聞いた中で、いちばん大きな拍手のような気がしました。

トウコさんは、すごくゆったりと満ち足りた笑みをたたえ。すっかり落ちついて貫禄のトップさんといった風情です.......トウコさんご自身の内心はどうかわからないけれど、私はそのように見受けられました。ムラでひと月余りの公演を終えたということは、やっぱりそれだけの何かを身に纏ったのだということなのですね....

あすかちゃん(遠野あすか)とちえちゃん(柚希礼音)も、ムラで見たときよりも、やわらかさを増した気がしました。というか、舞台全体がやわらかい雰囲気になった印象がありました。春の穏やかな日差しに照らしだされたような、幸せな空気が舞台に漂っていました。

その幸せな空気の中を、華やかに笑みを浮かべながら銀橋に歩み出るトウコさんはとても美しくて、感動。感激。また少し涙がこぼれそうになりました。


総踊りの後、舞台は一転。ミエコ先生(松本悠里)が現れました。女性コーラス.......当り前か(苦笑).......をバックに。夕焼け色の照明の中、博多人形のようです。ミエコ先生を見るといつも、そう思います。女らしいなぁ......なんていうのかな。ひとつの文化みたいなものがミエコ先生の中に息づいていると、そんな気がします。

ミエコ先生と入れ替わりに上手にセリあがるトウコさんは、静かで美しい。すべるように踊り始めるトウコさんは、深夜の月の光のような、冷たい光を放つように思われます。ミエコ先生の場面が女性の、というか人間の「情念」のようなものを表現しているのだとしたら、このトウコさんには、それを超越した何か、を感じます。美しい。思わず見入ってしまう.......そういえばこのショーには「妖しいまでに美しいおまえ」というサブタイトルがついていたのですね。そのことをふと、思い出しました。


再び桜の若衆、桜の女たちが登場し、トウコさんとあすかちゃんは黒いお着物から華やかなお衣装に早変わり。と同時に、トウコさんの表情もまた穏やかな明るい笑みに変わっていました。トウコさんを見上げるあすかちゃんの幸せそうな笑みも印象的です。あすかちゃんだけじゃない。トウコさんを囲む、組子さんたち皆が、幸せそうな笑みをたたえています。そんな、真中に立つトウコさん.........幸せだ......


続いて現れた「お内裏さま」ちえちゃんは、大きくて、ゆったり構えていて、いい感じ。ちえちゃんを囲んで下手の花道に現れた水輝椋ちゃん、麻尋しゅんちゃんは、ともにいい声。聞き惚れてしまいます。女雛さま@あすかちゃんの「節句人形の涙は~」の歌は、昔のムード歌謡みたいだけど、いい雰囲気。あすかちゃんが地声で歌うっていうイメージが、これまで私にはあんまりなかったのだけれど、やっぱりうまいなって思いました。

ひな壇が現れた時、ムラでは大爆笑だったんだけど、今日はあんまりリアクションがなくて......よくいわれることだけど、やっぱりムラと東宝では違うんだな.....と実感。だから自分も、爆笑しないで「クスっ」と笑いました(苦笑)

五月人形に扮したトウコさんは、ほんとうにかわいいなぁ.....トウコさんを囲む人形たちも、地顔(?)がわからないほど白塗りにしてるけれど、すっごく楽しそう。「出番を待とう」と歌いながら、人形たちと顔を見合せてうなずくトウコさんが、私はとっても好きです。かわいい。お雛様たちに木箱に閉じ込められて「お内裏くん!」と不満げによびかけるところも、かわいい.......ここは、トウコさんならではの。主演がトウコさんだからこそ、の、楽しい場面だな.......って思います。先の「妖しいまで」のトウコさんも、このかわいらしトウコさんも、どちらもトウコさんらしいなって思う。

しかも、この場面、トウコさんとあすかちゃんの歌がいいな。いわば聴かせどころなのかな.........歌の上手なトップコンビっていいなってつくづく思う。


灯篭を頭に載せた女たちの行列が現れて消えて。冷たく白い光の中に烏帽子・水干(狩衣?)姿のトウコさんが現れる。その様が鏡に映って、果てしなく空間が広がる。果てしない空間の中に一人公達が佇んでいる。とてもとても美しくて幻想的な「竹灯篭」の場面。この美しい舞台は宝塚歌劇ならではなんじゃないかな、と思う.........がっ!黒装束の大道具さんがセットの陰にしゃがみこんでいる姿が舞台の奥の鏡に....これも初日ならではの風景なのかなぁ.....(苦笑)

このトウコさんはとってもきれい。端正な美しさで、私はとても好きです。平家の落ち武者のイメージなのだそうですが。トウコさんはこの烏帽子・水干がとっても似合うと思う。それに、トウコさんに寄り添う白拍子@ミエコ先生が、どこからどう見ても少女のように可憐で。思わず目を見張りました。これはきっと日頃の精進の賜物なのね。芸の力ってすばらしい......


続く「花折」は、狂言をオペレッタ風にアレンジしたもの、らしいけれど。山法師のすずみん(涼紫央)も、檀那のしぃさま(立樹遥)も、それぞれの明るい持ち味が役とよく合っていて。楽しい。しぃさまが扇で仰ぎながら高らかに笑うところ。すずみんが酔ってふにゃ~って感じで笑うところ。それぞれに個性がよく現れていると思う。花見の男女もほんとに楽しげで。お披露目の春の作品によく似合っているんじゃないかな.....興を添えているんじゃないかな.....


一瞬の静寂の後。舞台に現れた大きな桜の幹の陰から。はらはらと落ちる桜色の花びら。その花びらを落とす指先が美しく撓る。大劇場で初見のときは気づかずにいて、見落としてしまったこの場面。今日は初めからしっかりとオペラグラスを構えて見つめていました.......美しい。他の表現が見つからないほど、美しい。そして切ない。指先はどんなときでも饒舌なものだというけれど。いま見つめているこの指先は、寡黙。だけどとても言葉で表しきれない、多くの何かを表現している気がする。その何かを受けとめようと、思わず息を潜めてしまう。

桜の陰から現れたトウコさんは、まさに桜の精。儚い。やがて優しく華やかにあらわれるあすかちゃんも、桜の精。舞ううちに一人、また一人、桜の精が現れては消える。それぞれにはらはらと花びらを落とす。はらはらと落ちるはずの花びらが、ところどころでポテっと固まって落ちたりするのは、大劇場の千秋楽から少し間が開いたから。まだ感覚が戻ってこないのかしら......??

枝垂れの桜が満開の花のように舞台の上から下がり、その桜の枝垂れの向こうに現れるトウコさんが、遥か遠くに見えて、切ない気持ちになった。舞台が八百屋になっているためか、ますます遠くに見える気がする。遠くの山を見遣ったときに、そこに小さな桜の影を見たような、そんな感じ。

トウコさんとあすかちゃんがくるくると舞台の上で回り、連れ添って袖に消える。二人の間にやわらかな光が見える。トウコさんによりそう、幸せそうなあすかちゃんが好きだ。そんなあすかちゃんを見れるのがうれしい、と、思う。

舞台手前でやさしくやわらかにまわる、しぃさまとすずみん。枝垂れの向こうに一人、霞のように現れた、しみこちゃん(和涼華)も、とても姿が美しくて印象的でした。

幾度めかに舞台に現れたトウコさんが、男役さんたちを引き連れて上手から下手に流れていく。その姿を見たとき、思いがけず涙が溢れてきた。なぜだろう.......

そう、私はやっぱり、皆の真ん中で、皆に囲まれて立つトウコさんが好きなのだ。トウコさんは、この東京宝塚劇場の大きな舞台の空間をたった一人で埋めることができるほど。それぐらい豊かな才能と強いオーラを持つ人だ、と思っている。けれど、組子さん、カンパニーに囲まれているときにこの人が醸し出す何かが好きなのだ。いま、この人はこのカンパニーの真ん中にいる。そのことを、この瞬間に実感したのかもしれない.......思いがけず訪れた大きな感動に、自分でもちょっとうろたえてしまいました(苦笑)

最後の総踊り。両手に差し上げた扇から桜の花びらがいっせいに舞い上がるのが、とてもきれい。トウコさんを囲む皆が、幸せそうな笑みを浮かべている..........大勢の中にいても、ミエコ先生の扇使いの巧みさ、身のこなしの美しさは当然ながら際立っていて、目をひきつけられてしまいますが...........その真ん中でトウコさんが、ひときわ幸せそうな、満足げな笑みを湛えている.....

それを見つめる私の胸にも、なんとも言いようのない幸せな思いが満ちてくるのを感じて。緞帳にさえぎられて次第に小さくまる幸せな光を見つめながら。思わず深く息を吸い込んだのでした。

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