Recent Trackbacks

« 涙は不意に....@花組大劇場公演千秋楽 | Main | 2008年の年頭に »

小さな白い花@宙組東宝千秋楽

P1010307
すこし前の話をします。

10月1日。宙組東京公演『バレンシアの熱い花』千秋楽の翌日。仕事で銀座に行く用事があったので、ついでに日比谷シャンテ地下のキャトルレーヴに、予約していた品物――星組博多座の舞台写真――を受け取りに行きました。

東京宝塚劇場の入口ロビーには休演日の札が立ち、劇場前の舗道も公演中の賑わいとはうってかわって、ひっそりと静まりかえっていました。

前日の千秋楽の日、私の住む横浜地方では朝から細かい雨が降ったり止んだりを繰り返していたけれど。千秋楽の幕が下りる頃、ここの空模様はいかがだったのでしょう....???


千秋楽の雨はせつない。退団者のあるときはなおさら。この道を歩いて帝国ホテル前の交差点に消える緑の袴姿を覆う雨。見送るファンたちに降りかかる雨.......今回の公演で卒業された3名の生徒さんたちの肩が濡れることはなかっただろうか......

夕闇の迫る舗道にふと、小さな小さなよねさん(鈴鹿照)の姿を見たような気がしました。よねさんの袴姿があの交差点の向こうに消える瞬間、見送るファンの心に浮かぶ思いは、同じだったと思う。

惜別......

私が初めて宝塚歌劇の舞台の上で、生の(笑)よねさんに出会ったのは、星組の前の前のトップスター・タータン(香寿たつき)のサヨナラ公演『ガラスの風景』でした。
まやさん(未沙のえる)と二人、仲良しで、人がよくってうわさ話が大好きな、年配の姉妹の小柄な姉さんの役。
割とシリアスなお芝居の中で“笑い”の部分を受け持っているのだと思うのだけれど、その姿が愛らしくって憎めない。こういうおばさん、たしかにいるよな~って苦笑交じりにうなずいてしまうような。そんな役。

ショー『バビロン』にもちょこっと登場していたっけ。コミカルな女役として。コミカルな男役として。

よねさんは小柄な方だけれど、男役も娘役も、どちらもこなされていた。善人のときもあれば、悪人の時もあった。けど、私の中のよねさんのイメージはいつも、善意に満ちたかわいらしい人。性善説の世界に生きる人。
悪人だけど、極悪人にはなりきれなくて、どこかに愛嬌を感じさせる。あるいは善人だけれど、どこかに小さな悪意が潜んでいる.......そんな人間の二面性というか、多様性というか。業のようなものを感じさせる人。そんな役がぴったりだったと思います。

そしてそこにいつも、生きる喜び、地に足をつけて生きる人々の力強さ、人の営みの素晴らしさ、人間への大きな愛、そんなものを感じさせられていました。

ひろい大地の片隅に人知れず楚々として、けれどたくましく花開く、小さな白い花。そんなイメージ。

宝塚歌劇は「夢の世界」なのだけれど、あまりにかけ離れた「夢」の世界であっても私たちはついていけない。その「夢の世界」を少しだけ、私たちの棲む「現実」の世界に引き寄せる手助けをしてくれるのがよねさんのような存在だったのかもしれない、とも思います。

よねさんの最後の出演作となった『バレンシアの熱い花』では、悪者・ルカノール公爵の従順な手下として働く小役人・ホルへを演じていました。ホルへは物語の終盤で、ルカノール公爵を討つために城に忍び込むフェルナンドを導く手助けをする。それは、自らの出世と懸賞金と引き換えにフェルナンドの父を手にかけたことへの償いのため、そして、息子ドンファンへの償いのためであった、という。このエピソードは初演時にはなかったもので、今回初めて物語に取り入れられたものだそうです。お芝居をみているときには、ちょっとびっくりさせられる、え?そうなの?みたいな、唐突な展開だったけれど。
ホルへが最後まで悪人に徹しきれないのは、よねさんらしいエピソードだと思います。そして、息子の腕の中で償いの思いを語りながらこと切れるのは、よねさんにふさわしい最後のシーンではないかな、と思いました。

そんな「よねさんらしさ」は、一朝一夕につくりあげられるものではなくて、長い宝塚歌劇の舞台経験の中で、培われ、築き上げられたものなのでしょう。

「42年のマラソンのゴール」と、千秋楽の挨拶の中で、よねさんはおっしゃいました。42年の年月の重み.........この42年間が失われることは、とても大きなことではないだろうか......

宝塚歌劇で再びよねさんのような存在に出会うまで、私たちはどれだけの時間を待ち続けることになるのだろうか........

« 涙は不意に....@花組大劇場公演千秋楽 | Main | 2008年の年頭に »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/14377/17352058

Listed below are links to weblogs that reference 小さな白い花@宙組東宝千秋楽:

« 涙は不意に....@花組大劇場公演千秋楽 | Main | 2008年の年頭に »